ネット検索や動画プラットフォーム上では、「100均の道具で直せる」「ヤットコとペンチで簡単DIY」といった情報が数多く流通しています。確かに、金具とチェーンを繋ぐ丸カンが単に開いてしまっただけであれば、平ヤットコを2本使い、金属の端面を前後にスライドさせて噛み合わせることで自力修復することは物理的に可能です。
しかし、現場の宝飾職人たちが口を揃えて警鐘を鳴らすのが、「瞬間接着剤の使用」と「一般工具による地金の圧壊」です。
チェーンのちぎれたコマを接着剤でくっつけようとする試みは、百害あって一利もありません。瞬間接着剤は液状の金属になじむことはなく、硬化しても極めて脆いため、着用時のわずかなテンションで即座に再破断します。さらに深刻なのは、「接着剤の成分が熱で炭化し、その後のプロによる溶接を不可能にしてしまう」という事実です。工房に持ち込まれた際、接着剤の除去作業だけで特殊な薬品処理が必要となり、通常修理の倍以上の追加料金が発生するケースが後を絶ちません。
また、家庭用ペンチのギザギザした刃先で繊細な18金やプラチナを強く挟むと、表面に深い刻み傷が入り、金属の強度が著しく低下します。金具の丸カン1つを閉じる作業であっても、工具の先端にマスキングテープを巻くなどの配慮ができない場合や、チェーン自体の破断である場合は、自力での介入を潔く断念することが、結果として愛用品の寿命を延ばす唯一の近道です。