街中から「隣保館」という名前が減りつつある事実に気づいているでしょうか。この背景には、自治体が進める施設の名称変更と統廃合という二つの大きな潮流が存在します。
第1の潮流は、「人権福祉センター」「地域交流センター」「ふれあいセンター」への改称です。かつての「隣保」という言葉が持つ歴史的イメージや、同和地区という固定観念を払拭し、すべての市民が利用しやすいユニバーサルな施設であることを示すために、2000年代以降、看板の掛け替えが全国で相次ぎました。法的な種別は「隣保館」のままでありながら、愛称や正式名称を刷新する自治体が増加しています。
第2の潮流は、施設の廃止や統廃合です。廃止が取り沙汰される主な理由は以下の3点に集約されます。
- 建物の老朽化と耐震基準の問題:昭和40〜50年代の特措法時代に集中的に建設されたため、築40〜50年を超えて大規模改修や建て替えの時期を迎えている。
- 自治体の財政緊縮と国の補助金縮小:かつての手厚い特定財源が終了し、維持管理費が基礎自治体の一般財源に重くのしかかっている。
- 公民館や集会所との機能重複:人口減少が進む地域において、至近距離にある公民館と隣保館を維持する合理性が薄れ、「複合公共施設」として集約・一本化される事例が増加。
ネット上では「差別問題がなくなったから廃止された」「住民トラブルで閉鎖に追い込まれた」といった根拠のない憶測が飛び交うこともありますが、実態は少子高齢化と自治体財政に伴う「公共施設マネジメント計画」に基づく統廃合が主因です。