「飲む量を減らせば副作用も減るだろう」「半分に割れば効果が半分になるだけ」という思い込みは、薬理学的に重大な誤解を孕んでいます。現実には、薬を半分に割ると効果半減する理由どころか、効果がゼロになったり、逆に通常の何倍もの薬効が一気に血中へ放出される極端な事態を招きます。
都内の調剤薬局に勤務するベテラン薬剤師は、次のように警鐘を鳴らします。「患者さんが錠剤を割ってしまう動機の大半は『飲みづらさの解消』か『効き目の自己調整』です。しかし、医薬品はミリグラム単位、時にはマイクログラム単位で精密に設計されています。割った断面から吸湿して有効成分が分解されたり、胃酸に触れた瞬間に成分が不活性化してしまえば、内服した意味そのものが失われます」。
特に問題視されるのが処方薬を勝手に半分にする危険性です。医師は患者の年齢、体重、肝機能や腎機能、血中濃度推移を緻密に計算して処方設計を行っています。高血圧治療薬や抗精神病薬、抗不整脈薬などを自己判断で割って服用した場合、血中濃度が急激に乱高下し、急激な血圧降下による失神や不整脈の悪化といった致命的なアクシデントに直結します。「少し小さくするだけ」という安易な妥協が、命に関わるリスクを生み出している事実に目を向けねばなりません。