スタジオジブリ映画『ゲド戦記』の挿入歌「テルーの唄」で鮮烈なデビューを飾って以来、手嶌葵の歌唱力に対する評判は音楽業界内外で極めて高く評価されています。その最大の武器は、息の混ざり具合が絶妙なウィスパーボイス(囁き声)と、言葉の母音を大切に響かせる丁寧な発音です。
感情を過剰に押し付けず、静寂の中に音を置くような歌唱法は、聴き手それぞれが持つパーソナルな記憶や痛みを投影できる「余白」を生み出します。ドラマの中で静かにイントロが流れ、手嶌葵の歌声が重なった瞬間に視聴者の涙腺が決壊したのは、彼女の歌声そのものが登場人物たちの心の内なる声を代弁していたからに他なりません。