新井浩文という俳優が抜けた穴は、とりわけアンダーグラウンドやリアリズムを追求する邦画界において、今も埋まっていないと指摘する声は少なくない。「彼のような、佇まいだけで人間の業や暴力性、哀愁を体現できる男優は希少だった」と、あるベテラン映画監督は明かす。特に骨太なクライム・ドラマや社会の周縁を描く作品において、日本映画界は長らく彼を重宝してきた経緯がある。
しかし、その特異な存在感への依存が、結果として現場での規律や倫理観の麻痺を見逃す土壌を作っていたのではないかという厳しい反省も存在する。「才能があれば私生活の危うさは不問に付される」という旧態依然とした業界の甘えが、あの悲劇的な事件を招いた一因であることは否定できない。