キャスト陣の卓越した演技力も、本作を名作たらしめている欠かせない要素だ。主人公の浜崎光生を演じた瑛太は、神経質で理屈っぽく、猫と盆栽を愛するクリーニング店員という一癖も二癖もあるキャラクターを見事に体現した。早口で捲し立てる長セリフのテンポ感は圧巻で、彼の独白を聞いているだけでも時間が過ぎていく。
その光生の妻・結夏を演じた尾野真千子の存在感も素晴らしい。大ざっぱでガサツに見えながら、内面に繊細な傷を抱える女性の機微を、笑いと涙の絶妙な塩梅で演じ切った。二人が目黒川沿いの家で繰り広げる口喧嘩は、もはや上質な演劇を観ているかのような錯覚すら覚える。さらに、真木よう子と綾野剛が演じるもう一組の夫婦が複雑に絡み合うことで、四者四様のこんがらかった愛の形が立体化していく。この役者たちの演技の化学反応こそ、動画配信サービスで何度でも再確認したくなる中毒性の源泉だ。