目をつぶると目をつむるの違いは?見逃すの正解と使い分けの真相

目をつぶると目をつむるの違いは?見逃すの正解と使い分けの真相

目をつぶると目をつむるの違いは?見逃すの正解と使い分けの真相の背景について、分かりやすい解説を取りまとめてご紹介します。

なぜ同じ日本語の中に、一文字違いの「つぶる」と「つむる」が共存しているのでしょうか。その歴史を遡ると、日本語の音韻変化と方言分布のダイナミズムが浮かび上がってきます。

語源の研究によると、歴史的に古くから存在していたのは「つぶる(瞑る・潰る)」の方でした。「つぶる」の語幹である「つぶ」は、物が押し潰されることや、丸い粒(つぶ)を連想させる言葉です。かつての人々は、まぶたを強く押し合わせて目を閉じる様を「目を押しつぶす」ような感覚で捉え、「目をつぶる」と表現するようになりました。平安時代の文献や中世の抄物にも、この「つぶる」の用例が確認できます。

その後、発音のしやすさから「バ行(破裂音・有声音)」が「マ行(鼻音)」へと移り変わる音韻変化が起きました。唇を破裂させて発声する「ぶ」よりも、鼻に抜ける「む」の方が口周りの筋肉の負担が少なく、滑らかに発音できるためです。こうして室町時代から江戸時代にかけて「つむる」という変形が民衆の口頭語として広まりました。

方言学の調査(日本言語地図など)においても、東西の分布差が指摘されています。かつては東日本で「つむる」が優勢となり、西日本や古語の残る地域で「つぶる」が根強く残っていた痕跡が見られます。しかし現在では地理的な境界線はほぼ消失し、全国的に双方が日常語として定着しました。ただし、比喩的な慣用句である「見逃す」という意味だけは、語源である「つぶる」の形に固定されたまま現代に残ったのです。

井上 凛
著者

井上 凛

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。