歌詞の先鋭的なメッセージを、誰の耳にも心地よく届く超一級のポップスへと昇華させたのが、稀代のメロディメーカー・筒美京平氏の手腕でした。この楽曲が誕生した背景には、大手下着メーカー・ワコールによる綿密な広告戦略が存在します。
当時、資生堂とカネボウが繰り広げていた季節ごとのキャンペーンソング対決は、歌謡界のヒットチャートを左右する一大トレンドでした。そこに挑んだワコールが、春の新作フロントホックブラジャーのキャンペーンCM曲として企画したのが本作です。クライアントから出されたオーダーは、「エーゲ海を想起させる地中海風のエキゾチックな世界観」と「大人の女性のセンシュアルな美しさ」でした。
筒美京平氏は、当時世界的なムーブメントとなっていたディスコ・ビートを土台に据えつつ、ストリングスとマンドリン風のアコースティック楽器を巧みに織り交ぜました。イントロから響くドラマティックなオーケストレーションは、まるで地中海の波しぶきと吹き抜ける風(Wind is blowing)を全身に浴びるかのような高揚感を生み出しています。
さらに、ジュディ・オングが身にまとった伝説の白い衣裳も、この音作りと完璧に連動していました。台湾出身の彼女が持つオリエンタルな気品と、手を広げると鳥の翼や船の帆のように広がるドレス。歌番組のスタジオで風に吹かれながら優美に舞うその視覚効果は、ブラウン管を通じて視聴者に強烈なトリップ体験を提供し、CMソングの枠を軽々と飛び越えて社会現象へと発展していきました。