実写ドラマ化にあたり、制作陣が下した最も大胆かつ英断とされる改変が、「スタンド」という概念の映像的アプローチです。
『ジョジョの奇妙な冒険』原作における露伴のスタンド「ヘブンズ・ドアー(天国への扉)」は、シルクハットを被った少年の姿をしたヴィジョンとして出現し、相手の顔や体を本に変えて記憶や行動履歴を読み取り、さらには命令を書き込む能力です。しかし実写版では、CGのスタンドキャラクターを派手に登場させる手法を意図的に排除しました。
露伴が手をかざす、あるいは相手が露伴の原稿を目撃した瞬間、相手の顔面がペラペラと音を立てて辞書のようにめくれ上がるという、物理的かつ触覚的な特殊メイクとVFXの融合を選択したのです。この演出によって、漫画的なファンタジーバトルではなく、海外のサイコホラーや奇妙な短編小説のような生々しい質感が画面にもたらされました。
また、原作ではスタンド使い同士の対決という文脈が存在しますが、ドラマ版では超常的な能力を「ギフト(天賦の才)」や「怪異」として解釈。露伴以外のキャラクターの能力もオカルト現象の一環として処理することで、ジョジョの予備知識が一切ない視聴者でも完全に独立したミステリーとして没入できる配慮が施されています。
さらに、泉京香を全編を通じたパートナーに据えた点も秀逸です。偏屈で社会性に欠ける露伴と、俗物だが愛嬌と強心臓を持つ京香のコントラストは、名探偵ホームズとワトソンのような古典的推理劇の推進力をドラマに付与することに成功しました。