「活字」という言葉の核心に迫るには、まずその漢字の成り立ちと歴史的背景を理解する必要があります。なぜ「死んだ文字」ではなく「活きた文字」と書くのか。そこには、印刷技術における極めて合理的な仕組みが隠されています。
活字が登場する以前、書物を印刷する主流の方法は「木版印刷(整版)」でした。これは1ページ分の文章や絵柄を1枚の木の板に丸ごと彫り込む技術です。しかし、木版には「一度彫ってしまうと、文字の並び替えや修正ができない」「別の本を作る際には、また最初から木を彫り直さなければならない」という致命的な欠点がありました。文字が版木に固定され、柔軟性を欠いていた状態です。
これに対し、1文字ずつ独立したパーツとして文字を作り、文章に合わせて自由に並べ替え、印刷が終わればバラして次の本のために再利用できるようにしたのが「可動活字(Movable type)」です。1文字単位で自由に動き、組み替えによって何度でも命を吹き込まれて「活きて使われる文字」。これが活字の語源と由来です。英語の「Type」の訳語として、明治初期に日本へ定着したとされています。
物理的な金属活字の仕組みは極めて精密です。主に鉛約80%、アンチモン約15%、スズ約5%を配合した特殊な鉛合金で作られています。アンチモンは冷えて固まる際に体積がわずかに膨張する特性を持ち、これにより母型の微細な毛筆のハライやトメのディテールまで正確に鋳造することが可能になりました。四角い金属柱の先端に反転した文字が彫られており、職人(文選工・植字工)が原稿を見ながら一文字ずつ手作業で拾い上げ、版を組み上げていきました。