映画『月』の公開以降、SNSや映画レビューサイト、5ちゃんねる等では、これまでの日本映画には見られなかったほど激しい賛否両論の嵐が巻き起こりました。その声を精査すると、観客が受けた衝撃の深さと、作品が突いた痛点が鮮明に浮かび上がってきます。
ネット上の肯定的な声では、「映画館を出た後、しばらく言葉が出なかった」「これほど逃げずに人間の暗部を描いた石井裕也監督とキャストに敬意を表したい」「磯村勇斗の演技はアカデミー賞どころか世界レベル」といった、演出と演技の極致を称賛する意見が目立ちます。特に、福祉関係に従事する読者からは「現場の過密労働や、職員の善意だけに頼り切った社会システムの限界がリアルに描かれている」という切実な共感が寄せられました。
一方で、否定的なレビューや批判の声も少なくありませんでした。「被害者や遺族への配慮が足りないのではないか」「トラウマが蘇り、途中で席を立ちたくなった」「加害者の論理を詳細に描きすぎている」といった指摘です。しかし、これらは作品の出来栄えに対する批判というよりも、作品が放つ毒気に圧倒された観客の防衛反応とも読み取れます。安易なカタルシスや道徳的なお説教を徹底して排除したからこそ、観客は自らの内面にある冷酷さと向き合わざるを得なくなり、激しい拒絶や議論へと発展したのです。