前日譚である映画『モンスターズ・ユニバーシティ』では、マイクの学生時代とサリーとの出会いが克明に描かれています。この作品が傑作と称される所以は、ディズニー作品にありがちな「努力すれば夢は必ず叶う」という安易な成功神話を敢えて打ち砕いた点にあります。
幼少期から「怖がらせ屋」になることを夢見て、誰よりも分厚い教科書を読み込み、モンスター大学の怖がらせ学部に入学したマイク。しかし、どれほど技術と理論を極めても、彼自身の愛嬌ある容姿は子どもに恐怖を与えることができませんでした。一方の名門出身エリートであるサリーは、努力を怠りながらも天性の威圧感だけで周囲から持て囃されます。激しい対立の末、2人は不正行為によって大学を追放されるという手痛い挫折を味わいます。
しかし、マイクの真の偉大さはここから始まります。夢破れた彼は腐ることなく、モンスターズ社の郵便係という最下層の現場からキャリアを再スタートさせます。自らが怖がらせ屋になれない現実を受け入れた上で、サリーの才能を最大限に引き出す名コーチへと自らを再定義したのです。この過程で交わされた言葉は、現在もモンスターズインク名言まとめとして語り継がれています。
「君はちっとも怖くない。だけど、誰よりも恐れを知らない奴だ」(サリー)
「俺たちなら、やれるさ。二人一緒ならな」(マイク)
恐怖の才能がないことを突きつけられたマイクが、恐怖に怯まない「勇気の才能」を認められるこの瞬間、2人の主従関係は解体され、対等な盟友としての絆が完成しました。持たざる者が現実と向き合い、自らの居場所を自力で切り拓いていく泥臭い生き様こそ、大人の鑑賞者をも唸らせるマイク人気の神髄です。