「焼き牡蠣や鍋でしっかり火を通したはずなのにあたった」という声が絶えない背景には、加熱温度の不足と調理工程における「二次汚染」という致命的な盲点が存在します。
ノロウイルスは熱に非常に強い構造を持つノンエンベロープウイルスであり、一般的な食中毒菌のように「湯通し程度」や「表面が白くなった程度」では死滅しません。厚生労働省のガイドラインでは、ウイルスを完全に死滅させる基準として「食品の中心温度が85℃〜90℃の状態で90秒以上」の加熱を義務付けています。鍋料理ですぐに引き上げてしまったり、殻付き焼き牡蠣で殻が開いた直後に口に運んだりした場合、中心部の温度は60℃前後にしか達しておらず、内部のウイルスが生存しているケースが多々あります。
また、生牡蠣を掴んだトングや箸でそのまま仕上がった料理を取り分けたり、牡蠣の殻を触った手でサラダや食器を触ったりすることによる交差汚染(二次汚染)も感染の主要因です。摂取してから発症するまでの潜伏期間は概ね24時間〜48時間(平均36時間前後)であり、「昨夜食べた牡蠣ではなく、一昨日食べた鍋が原因だった」という時間差のズレが原因特定を難しくさせる要因にもなっています。