陽子線治療は、希望すれば誰でも受けられるわけではありません。日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の診療ガイドラインおよび厚生労働省の保険収載基準により、厳格な適応判定が行われています。
具体的に陽子線治療を受けられない人・適応外となるケースには以下の条件が挙げられます。
- がんが広範囲に多発転移している場合:陽子線は病巣を局所的に狙撃する治療法のため、全身に微小ながん細胞が散らばっているステージ4の進行がんには効果が限定的です。
- 病変が消化管(胃・十二指腸・大腸など)に直接接している場合:照射によって消化管に穴が空く「穿孔(せんこう)」や大出血を引き起こす危険性が極めて高くなります。
- 過去に同一部位へ規定量以上の放射線治療を受けた既往がある場合:正常組織の許容線量を超過し、重篤な組織壊死を招く恐れがあります。
- 長時間の静止姿勢や呼吸同期が維持できない場合:ミリ単位の精密照射を行うため、固定具を装着した状態で15〜30分程度同じ姿勢を保つことができない患者は安全な実施が困難です。
公的医療保険が適用される適応がん種についても、「切除不能な局所進行がん」や「決められた最大腫瘍径以内」といった詳細な医学的条件が細かく設定されています。保険適用外となった場合、300万円前後の自己負担を自費で支払うか、標準治療(抗がん剤や手術、従来のX線照射)へ切り替えるかのシビアな決断を迫られます。