デジタル作画が主流となった2026年現在、矢口高雄氏の遺産はより一層の輝きと重要性を放っています。その中核を担っているのが、矢口氏の故郷・秋田県横手市にある「横手市増田まんが美術館」です。
同館は1995年、矢口氏の名誉館長就任とともに開館し、2019年に日本初となる「マンガ原画の大規模保存・活用」を目的とした本格的なアーカイブ施設としてリニューアルオープンしました。館内には矢口高雄氏が生涯で執筆した約4万5,000枚におよぶ全直筆原画が完璧な温度・湿度管理のもとで永久収蔵されています。
原画保存への強い危機感は、矢口氏自身が長年抱き続けていた信念でした。印刷技術の発展によって原画が「役目を終えた資材」として粗雑に扱われたり散逸したりすることを防ぐため、私財と人脈を投じて美術館の設立に尽力したのです。現在、同館には矢口作品だけでなく、日本を代表する漫画家180名以上・45万点を超える原画が集約され、世界中の研究者やアニメ・マンガファンが訪れる文化交流の聖地となっています。
また、矢口氏の公式情報発信やライツ管理は次女をはじめとする家族体制によって丁寧に引き継がれており、原画展の開催やデジタルアーカイブの公開など、次世代への継承プロジェクトが活発に進行しています。