卓上に設置された特注ロースター。その上で丸ごと一本の羊の前脚や後脚、あるいは背骨付きの塊肉がじっくりと回転する。余分な脂が炭火に落ちるたび、立ち上る白煙が肉の表面を香ばしく燻していく。切り分けるのは客自身だ。長いナイフとトングを手に、外側のカリッとした皮目を削ぎ落とし、口へ運ぶ。噛みしめた瞬間に広がるのは、野性味あふれる旨味と驚くほど上品なジューシーさだ。
中国の北方、特に内モンゴルや東北地方で親しまれてきた伝統的な羊の丸焼き文化。喜羊門の厨房を預かるベテランの中華料理人は、鮮度抜群のラム肉に数十種類の秘伝スパイスを擦り込み、下味を徹底的に染み込ませる。臭みは微塵もない。むしろスパイスの多層的な香りが羊肉の甘みを引き立て、一度食べ始めると手が止まらなくなる中毒性を持つ。