なぜ「膾炙」という言葉が「人々に親しまれる」という意味になったのでしょうか。その背景には、古代中国の食文化と故事が深く関わっています。
漢字を分解すると、その成り立ちが鮮明に見えてきます。
- 膾(なます):細かく刻んだ新鮮な生肉や生魚のこと。
- 炙(しゃ/あぶり肉):直火で香ばしく焼いた肉のこと。
古代中国において、「膾」も「炙」も誰もが好んで食べる極上のご馳走でした。そこから、中国の古典『孟子』尽心下篇において「美味しいご馳走が誰の口にも美味しく感じられるように、優れた詩文や作品が多くの人に喜ばれ、口々に称賛される」という例えとして使われたのが語源です。
唐代の詩人・白居易(白楽天)の詩が庶民から貴族に至るまで愛唱された様子を讃える際にも用いられ、時代を超えて「人々に愛される名作・名言」を表す故事成語として定着しました。