「このホールの客席に向かって音を放つとき、独特の温かみのある反射が返ってくる」。長年このステージに立ち続けてきたベテランミュージシャンは、舞台袖でそう語る。木目を基調とした内装と独特の音響特性を持つフォレストホールは、数々の伝説的ライブの舞台となってきた。昭和の歌謡曲全盛期から平成のバンドブーム、そして令和のライブカルチャーに至るまで、世代を超えた観客の熱気を吸収してきた壁面には、数値では測れない文化的な価値が染み込んでいる。
客席の勾配や舞台からの見通しの良さも、長年ファンに愛されてきた理由だ。再開発によってこの歴史的音響空間が消滅することへの切ない焦燥感と、最新技術による環境改善を歓迎する期待感。現地では二つの感情が複雑に交錯している。