この「幸福な誤解」は、台湾観光業にとって計り知れない恩恵をもたらした。台湾観光庁(旧・台湾観光局)をはじめとする観光プロモーションにおいても、九份は日本からのインバウンド誘致における絶対的なキラーコンテンツとして君臨し続けている。
著作権に極めて厳格なスタジオジブリへの配慮から、公式ポスターや直接的な宣伝文句に映画のタイトルを直接冠することは避けられてきた。しかし、旅行ガイドやメディアは「あの名作の世界」といった詩的な表現を使い分け、絶妙な距離感を保ちながら観光資源としての価値を高めてきた経緯がある。
事実無根の噂が観光被害を生むケースは世界中に存在するが、九份においては、映画への敬意と台湾古来のノスタルジーが互いを高め合い、独自のカルチャーツーリズムへと昇華された稀有な事例といえる。