本作のクライマックスとなる最終回(第10話)は、若年性アルツハイマー病の進行によって愛する夫や息子の記憶すら失った北澤尚(戸田恵梨香)と、彼女を包み込むように見守り続けた間宮真司(ムロツヨシ)の愛の到達点を描いています。
物語終盤、病状が悪化し自分が家族を傷つけてしまうことを恐れた尚は、真司の前から姿を消します。真司は警察や元婚約者である主治医・井原侑市(松岡昌宏)の協力を得ながら懸命に捜索を続け、ついに煙突の見える海辺の小さな診療所で暮らす尚の居場所を突き止めました。しかし、再会した尚の瞳に真司の姿は映っておらず、最愛の夫のことすら完全に忘れてしまっていたのです。
それでも真司は尚の傍らに寄り添い、自らが彼女との出会いから現在までを綴って大ベストセラーとなった小説『脳みそとアップルパイ』を優しく読み聞かせます。その瞬間、奇跡が起こります。小説の一節を聞いた尚の表情が微かに変化し、ふっと真司の顔を見つめてこう呟いたのです。
「真司……。真司、続きを読んで……」
ほんのわずか数分間、病魔に奪われていた尚の記憶が鮮やかによみがえり、真司を「最愛の夫」として認識した瞬間でした。互いに流した涙と抱擁は、視聴者の心を激しく揺さぶりました。しかし、その奇跡的な時間の直後、尚の意識は再び混濁し、元の状態へと戻ってしまいます。
その後、尚は肺炎を併発し、真司や家族に見守られながら静かに息を引き取ります。悲劇的な結末でありながらも、真司の胸には尚と過ごした掛け替えのない日々と、彼女が最期まで懸命に生きた証が深く刻まれていました。真司が息子・恵一とともに前を向いて歩み出すラストシーンは、喪失を超えた深い愛の余韻を残しています。