二輪業界における日の丸モチーフは、世界の頂点を目指したレーシングスピリットの象徴であると同時に、日本のアンダーグラウンドカルチャーとも深く結びついています。この二面性を理解しない限り、日の丸ヘルメットに対する世間の評価のねじれを読み解くことはできません。
国内二大メーカーであるアライヘルメット(Arai)やショウエイ(SHOEI)は、歴代の日本人グランプリライダー(阿部典史氏や加藤大治郎氏など)を支える中で、日本の象徴としての日の丸や旭光を洗練されたグラフィックへと昇華させてきました。これらはJIS規格や極めて厳格なSNELL規格をクリアしたハイエンドギアであり、世界中のサーキットや一般ツーリングライダーから絶大な敬意をもって愛用されています。
対照的なのが、いわゆる「コルク半」と呼ばれる半キャップ型ヘルメットに、富士山と日章旗を組み合わせた「富士日章」のバイク塗装です。エアブラシやマスキングを駆使した精緻なカスタムペイントは工芸品としての高い完成度を誇るものの、1980年代以降の暴走族文化と不可分に結びついてきた歴史的経緯があります。現在でも「コルク狩り」と呼ばれるヘルメットの強奪事案が一部地域で報じられるなど、デザイン単体を超えた治安上の文脈を背負わされているのが実情です。