江戸時代、猗窩座は「狛治(はくじ)」という名の人間の少年として貧民街に生を受けました。病弱で寝たきりの父親を救うため、狛治は幼い身でありながら裕福な者たちから金品を盗むスリを繰り返します。しかし、捕まるたびに奉行所で激しい拷問を受け、罰として両腕に筋状の「刺青(いれずみ)」を彫り込まれました。当時の刑罰制度において、刺青は社会的な死を意味する罪人の刻印でした。
三度目の刑罰を受け、背中に百叩きの傷を負って帰宅した狛治を待っていたのは、自ら命を絶った父親の遺体でした。枕元には「真っ当に生きてほしい、人の金を奪ってまで生きたくはない」という遺書が残されていました。父を救うための行動が皮肉にも父を追い詰めてしまったという事実は、少年の精神を根底から破壊します。「生きる気力を失った父親」と「貧者を搾取する奉行所の役人たち」。理不尽な世の仕組みに対するやり場のない怒りは、狛治の拳を暴力へと傾倒させていきました。