鼻漏の色や粘調度は、体内で起きている炎症の深さと緊急度を物語る重要なサインだ。白濁色から黄色、さらに粘り気のある黄緑色へと変化したものは「膿性鼻漏(のうせいひろう)」と分類される。この膿性鼻漏と副鼻腔炎の関係は極めて密接であり、いわゆる「蓄膿症」の典型的な兆候だ。
副鼻腔炎では、鼻腔と副鼻腔を連絡する自然孔が粘膜の腫脹によって閉塞し、副鼻腔内に細菌(肺炎球菌、インフルエンザ菌、嫌気性菌など)や好酸球が増殖する。白血球の死骸や壊死組織が混入することで鼻漏は黄色く濁り、悪臭を放つようになる。顔面の圧迫痛、頬や額の鈍痛、頭重感を伴う場合は、急性副鼻腔炎が慢性化へと移行しているサインと捉えるべきである。
さらに、水様性鼻漏の中で絶対に看過してはならないのが、頭蓋底の骨欠損を通じて脳を保護する液体が漏出する「脳脊髄液鼻漏(のうせきずいえきひろう)」である。外傷、頭蓋内手術の後遺症、あるいは特発性に生じるこの病態は、鼻腔から頭蓋内へ細菌が逆行感染し、致死的な化膿性髄膜炎を引き起こすリスクを孕む。
外来現場で問われる脳脊髄液鼻漏の見分け方としては、以下の臨床的特徴が挙げられる。一般的な鼻炎とは異なり、「常に片側の鼻孔からのみ漏出する」「前屈みの姿勢をとると無色透明の液体がタラタラと滴り落ちる」「鼻水をすすっても粘り気が全くなく、喉に流れた際にほのかな甘み(グルコース含有のため)を感じる」といった点が鑑別の決め手となる。