表向きは特務機関NERV(ネルフ)の上部組織である国連直属の「人類補完委員会」、そしてその背後に君臨する秘密結社「ゼーレ(SEELE)」によって推進されていたこの計画ですが、実態は組織のトップ同士による激しい主導権争いとシナリオの奪い合いでした。
キール議長率いるゼーレは、太古の先住民族が遺したとされる「裏死海文書」に記された予言を狂信的に崇拝していました。彼らにとって人類は知恵の実を盗み食いした罪深き存在であり、使徒をすべて撃破した後に、リリスの器であるエヴァンゲリオン初号機を依り代として全人類の魂をリリスの卵(黒き月)へ還すことこそが、唯一の救済(神への帰還)だったのです。
一方、ゲンドウの動機は極めて個人的かつ純粋でした。学生時代に唯一自分を肯定し孤独から救い出してくれた最愛の妻・碇ユイが、2004年の初号機接触実験で機体に取り込まれて消滅。以来、ゲンドウの人生の目的は「ユイともう一度逢うこと」だけに固定化されました。ゲンドウはゼーレの巨額の予算と権力を利用しながら、裏で自らの肉体にアダムを移植し、リリスの魂を持つ綾波レイを掌握することで、ゼーレの意図しない独自の補完計画を強行しようと暗躍していたのです。