糸を撚る科学と技術の全貌|強度を生む仕組みとS・Z撚りの見分け方

糸を撚る科学と技術の全貌|強度を生む仕組みとS・Z撚りの見分け方

糸を撚る科学と技術の全貌|強度を生む仕組みとS・Z撚りの見分け方の見逃せないポイントを一挙に解説しました。

一本の繊維束に撚りをかけただけの糸を「単糸(シングル)」と呼びます。しかし単糸は、ねじられたバネのように常に元に戻ろうとする回転トルク(残留応力)を内部に抱え込んでいるため、そのまま布に織ったり編んだりすると、編み地が斜めに歪む「斜行」や、糸同士が勝手に絡みつく「キンク(結び目状の縮れ)」を引き起こします。

この問題を解消し、糸の完成度を飛躍的に高める手法が「双糸(プライ)」をはじめとする合撚(ごうねん)です。合撚糸のメリットは、逆回転のトルクでねじり合わせることにより、応力を相殺して物理的に中和(バランス)できる点にあります。例えば、2本のZ撚り単糸を合わせる場合、逆向きのS撚りで撚り合わせます。これにより、単糸が戻ろうとする右回転の力と、合撚の左回転の力が互いに打ち消し合い、手を離しても真っ直ぐに垂れ下がる安定した糸が完成します。さらに、複数本を束ねることで引張強度が向上し、太さのバラつきが平滑化される点も大きな利点です。

そして、手紡ぎの最終工程として決して省いてはならないのが手紡ぎ糸の撚り止め(セット)です。紡ぎ終えた糸を「かせ(綛)」の状態に巻き取り、40〜50℃程度のぬるま湯に浸してウールや綿の繊維内部にある水素結合を一時的に切断します。その後、余分な水分をタオルドライし、適度な重りを吊るしてテンションをかけながら日陰で完全乾燥させます。この温水浸漬と乾燥の過程で繊維分子の架橋構造が新しい撚りの形状のまま再結晶化し、糸の暴れが完全に鎮静化します。この撚り止めの成否が、後工程での編みやすさと仕上がりの美しさを決定づけます。

松本 悠斗
著者

松本 悠斗

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。