高い治療効果を持つ反面、モキシフロキサシンを安全に服用するためには添付文書上の「警告」や「禁忌」に指定されているリスクを正確に把握しておく必要があります。
最も警戒すべき副作用のひとつが、心電図におけるQT延長およびそれに伴う心室性頻拍(トルサード・ド・ポアンツを含む)の発生です。モキシフロキサシンは心筋細胞のカリウムチャネルを遮断する性質が他のキノロン薬に比べてやや強く、QT間隔を過度に延長させる危険性があります。そのため、先天性QT延長症候群の患者、重篤な徐脈や低カリウム血症などの電解質異常がある患者、さらにクラスIA(キニジン、プロカインアミドなど)やクラスIII(アミオダロン、ソタロールなど)の抗不整脈薬を服用している患者に対しては完全な投与禁忌に指定されています。
また、ニューキノロン系に共通する警告として「アキレス腱炎および腱断裂」があります。服用開始から数日、場合によっては数週間後に足首やかかとに激痛や腫れが生じるケースが報告されており、特にステロイド内服薬を併用している高齢者でリスクが跳ね上がります。歩行時のかかとの違和感や痛みを感じた場合は、直ちに運動を中止して主治医に連絡しなければなりません。
さらに、成長期の関節軟骨障害の懸念から「小児および骨端線閉鎖前の若年者」、そして動物実験で催奇形性・胎児毒性が示唆されている「妊婦または妊娠している可能性のある女性」も禁忌の対象です。血糖値の急激な乱れ(重篤な低血糖または高血糖)や、血管壁が脆弱化することによる大動脈瘤・大動脈解離のリスクも国内外の規制当局から繰り返し注意喚起が出されています。
なお、外用剤であるベガモックス点眼液においては、点眼後の眼の刺激感、充血、角膜障害などの局所副作用が中心であり、内服薬のような全身毒性の発現頻度は極めて稀です。ただし、点眼した薬剤が目頭の鼻涙管を通って鼻腔粘膜から全身へわずかに吸収される可能性があるため、点眼後は1〜5分程度目頭を軽く圧迫するという基本的な点眼手順を怠らないことが肝要です。