SNSやネット掲示板の相談コーナーで定期的に炎上するのが、「豆柴としてお迎えした子犬が、生後1年で10kgを超えて立派な柴犬になった」という体験談です。愛情を持って育てている飼い主にとっては「大きく育っても愛犬に変わりはない」という結末に至ることが多いものの、居住スペースの制限や管理規約(規約で「体重10kg未満」と定められたマンションなど)を抱える家庭にとっては死活問題です。なぜ、このような現象が起きるのでしょうか。
豆柴が大きくなる理由と真相には、生物学的な遺伝構造と、悪質な繁殖業者の手口という2つの側面が絡み合っています。
第一の要因は、遺伝的な「先祖返り(隔世遺伝)」です。柴犬は千年以上前から日本列島で狩猟犬として活動してきた原始的な犬種であり、骨格のサイズを司る遺伝子が極めて強固です。たとえ両親犬が小柄な体型であっても、祖父母や曾祖父母の世代に大柄な柴犬の血が入っていれば、その遺伝子が子孫に強く発現することは珍しくありません。数代にわたって小型サイズを固定化(世代固定)させていない未熟な繁殖ラインでは、成犬時に柴犬本来の体格へと成長してしまう確率が跳ね上がります。
第二の、そして最も悪質な要因は、成長期における意図的な給餌制限です。一部の悪質なブリーダーは、子犬期の販売サイズを無理やり小さく見せるため、生後数週間の最も栄養を必要とする成長期にドッグフードの量を極端に制限します。栄養失調によって骨格の伸びを抑え、「超小型の豆柴」として展示・販売する手口です。このような子犬を迎えた飼い主が、自宅で月齢に応じた適切な食事を与え始めると、抑え込まれていた成長因子が一気に解放され、急速に柴犬サイズへと巨大化する「キャッチアップ・グロース(代償成長)」が起こります。これは犬の健康と生命を著しく脅かす極めて深刻な問題です。