魔女の宅急便の歌と主題歌の真相!ユーミン起用理由と名曲の全貌

魔女の宅急便の歌と主題歌の真相!ユーミン起用理由と名曲の全貌

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『魔女の宅急便』の音楽を語る上で最大の疑問として語り継がれているのが、宮崎駿監督作品でありながら、なぜ荒井由実の既存楽曲が主題歌に選ばれたのかという点です。スタジオジブリの長編アニメーションにおいて、オープニングとエンディングの双方にポップス界の既存メジャー楽曲をそのまま採用した事例は極めて異例でした。

このキャスティングを主導したのは、プロデューサーの鈴木敏夫氏です。当時のスタジオジブリは、ヤマト運輸とのタイアップが進行しており、映画のターゲット層を「児童向け」から「思春期を生きるリアルな若い女性たち」へと広げる必要性に迫られていました。当時の報道各社の記録やジブリ関係者の証言録によると、鈴木氏は「地方から上京して都会の片隅で懸命に生きる女の子の気分を表現できるのは、ユーミンの世界観しかない」と確信していたと振り返っています。

当初、宮崎駿監督はニューミュージック界の旗手であった松任谷由実の楽曲に明るくありませんでした。そこで鈴木氏は宮崎監督を誘い、実際にユーミンのライブコンサートへと足を運んでいます。巨大なステージで熱狂する大観衆と、都会的なセンスのなかにどこか普遍的な哀愁をたたえたメロディに触れた宮崎監督は、その圧倒的な表現力に強い感銘を受けました。

実はプロジェクトの初期段階では、「映画のために新曲を書き下ろしてもらう」という構想が進められていました。しかし、1989年当時の松任谷由実氏は全国ツアーとアルバム制作の過密日程の渦中にあり、映画の制作スケジュールに合わせた新曲のスタジオ録音は時間的に極めて困難な状況に陥ります。そこで浮上したのが、「荒井由実時代の初期名曲群から選定する」という大胆な逆転の発想でした。

宮崎監督と制作スタッフは、初期アルバム『MISSLIM(ミスリム)』や『COBALT HOUR(コバルト・アワー)』を徹底的に聴き込み、キキの心の旅路と見事に重なり合う2曲を選び出しました。それが、親元を離れて見知らぬ街へと飛び出す高揚感を表現した『ルージュの伝言』と、挫折を経験して日常の尊さに気づく物語の結末を優しく照らす『やさしさに包まれたなら』だったのです。

池田 達也
著者

池田 達也

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。