本作における評価を決定づけたのは、相手役を務めた綾野剛との息を呑むような芝居の応酬です。綾野剛と多部未華子の共演は、互いに妥協を許さない憑依型俳優同士のセッションとして、公開当時の映画ファンや映画関係者の間でも熱狂的な支持を集めました。
特に観客の目を釘付けにしたのが、アパートの部屋で繰り広げられるピースオブケイクのキスシーンと一連のベッドシーンです。志乃が隣人でありバイト先の店長である京志郎(綾野剛)に本気の恋心を募らせ、感情を爆発させる場面では、単なる形式的なラブシーンにとどまらない生々しい情動がカメラに収められました。ブラジャーのホックを外され、背中を大胆に見せながら相手を抱きしめる多部未華子の映画ベッドシーンは、邦画のメジャー配給作品としては極めて踏み込んだ演出です。
当時の初日舞台挨拶や映画専門誌の単独インタビューにおいて、多部は「志乃という不器用な女性の痛々しさを表現するためには、生半可な気持ちではいけないと覚悟を決めて臨んだ」と述懐しています。この徹底した役への没入と多部未華子の体当たり演技こそが、観る者に「本当に脱いでいるのではないか」と錯覚させるほどの説得力を生み出しました。