中高年になると「人の名前が出てこない」「眼鏡をどこに置いたか忘れる」といった経験は誰にでも生じます。そこで直面するのが、もの忘れと認知症の決定的な違いです。
医学的に両者を分ける境界線は、「記憶の脱落範囲」と「自覚の有無」にあります。
- 加齢による自然な物忘れ:「昨日の夕食に何を食べたか思い出せない」。食事をした事実そのものは覚えており、メニューを忘れている状態。ヒントを出されれば「ああ、カレーだった」と思い出せます。物忘れをしている自覚(危機感)があります。
- 認知症による記憶障害:「昨日の夕食を食べたこと自体を忘れる」。体験の枠組み全体が抜け落ちているため、「まだご飯を食べていない」と主張します。ヒントを出されても記憶が蘇ることはなく、本人に物忘れの自覚はありません。
日々の暮らしの中で見落としてはならないアルツハイマー型認知症 初期症状 サインとしては、以下のような行動変化が挙げられます。
- 同じ話を何度も繰り返す・同じ物を重複して買ってくる:冷蔵庫に同じ銘柄の味噌や調味料が4つも5つも溜まっているのは典型的な危険信号です。
- 料理の手際が極端に悪くなる:複雑な工程を同時に処理する「遂行機能」が衰えるため、得意だった煮物の味付けが変わったり、何品も並行して作れなくなります。
- 身だしなみへの関心の低下:季節外れの服装を選んだり、同じ服を着続けたり、入浴を嫌がるようになります。
- 取り繕い(繕い反応):日付や予定を聞かれた際、わからないことを隠すために「今日はのんびりする日だから日にちなんて気にしない」などと冗談めかして誤魔化す防衛反応を示します。
また、注意を要するのが若年性アルツハイマー 早期発見の難しさです。65歳未満で発症する若年性は、国内に約3万5,700人(厚生労働省推計)存在すると推計されています。「仕事のミスが急に増えた」「締め切りを守れなくなった」といった変化が、当初は「うつ病」「更年期障害」「過労」と誤診され、確定診断に至るまで平均して約1.5〜2年の遅れが生じる実態が各専門外来の調査で報告されています。