分圧の公式を自在に使いこなすためには、2つの主要な計算ルートを状況に応じて使い分ける必要があります。大手予備校の難関大クラスで教鞭を執るプロ講師の手記でも、「入試で混合気体を素早く処理できる受験生は、問題文の与条件から瞬時に2つのルートを選択している」と語られています。
ルート1:気体の状態方程式を直接適用する求め方
体積 $V$[L]の容器に、温度 $T$[K]のもとで成分気体Aが $n_A$[mol]、気体Bが $n_B$[mol]存在する場合を考えます。成分気体Aは、他の気体が存在しないかのように単独で体積 $V$ 全体に広がっているとみなせるため、気体定数を $R$ と置けば、成分気体Aについてそのまま気体の状態方程式を適用できます。
気体Aの分圧を求める式:
$P_A \times V = n_A \times R \times T$ ⇒ $P_A = \frac{n_A R T}{V}$
同様に気体Bの分圧も $P_B = \frac{n_B R T}{V}$ で求まります。容器の容積と各成分気体のモル数、絶対温度が与えられている場合は、このアプローチが最短かつ最もミスの少ない計算法です。
ルート2:モル分率の計算から分圧比を導く求め方
もう一つのアプローチが、全圧と各気体の物質量比(モル比)に着目する手法です。全圧 $P$ は、全物質量 $n_{全} = n_A + n_B$ を用いて $P = \frac{(n_A + n_B) R T}{V}$ と表されます。ここで、気体Aの分圧 $P_A$ と全圧 $P$ の比率をとってみましょう。
$\frac{P_A}{P} = \frac{n_A}{n_A + n_B}$
右辺の「全物質量に対する特定成分の物質量の割合」のことをモル分率と呼びます。この数式が示しているのは、「分圧比と物質量比は完全に一致する」という極めて強力な法則性です。つまり、分圧の公式は次のように表現できます。
気体Aの分圧 $P_A$ = 全圧 $P$ × 気体Aのモル分率($\frac{n_A}{n_{全}}$)
例えば、全圧が $3.0 \times 10^5\text{ Pa}$ で、窒素が2.0mol、アルゴンが1.0mol含まれる混合気体を考えます。全体の物質量は3.0molですから、窒素のモル分率は $\frac{2.0}{3.0} = \frac{2}{3}$ となります。したがって、窒素の分圧は $3.0 \times 10^5\text{ Pa} \times \frac{2}{3} = 2.0 \times 10^5\text{ Pa}$ と、わずか数秒の暗算で導き出せます。