牡蠣の栄養価を語る上で欠かせないのが、可食部100gあたり約14.5mgという全食品中トップクラスの亜鉛含有量です。成人男性の1日あたりの推奨量が約11mg(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」より)であることを考えると、わずか数粒で1日分を満たせる計算になります。ところが、食べ合わせ次第ではその恩恵の大半をドブに捨てることになりかねません。
代表格が牡蠣とタンニンの食べ合わせです。タンニンはポリフェノールの一種で、緑茶や紅茶、コーヒー、赤ワイン特有の渋み成分です。タンニンは鉄分や亜鉛などの金属イオンと強力に結びつく性質(キレート結合)を持っています。胃腸内でタンニンと出会った亜鉛は、分子の大きな不溶性物質に変化するため、小腸粘膜のトランスポーターを通過できなくなります。食後すぐに濃い緑茶やコーヒーを飲む習慣がある人は、せめて食後1時間ほど間隔を空ける配慮が効果的です。
また、牡蠣とほうれん草の組み合わせにも注意を払う必要があります。ほうれん草のバターソテーに牡蠣を加える洋食メニューは定番ですが、ほうれん草に豊富に含まれる「シュウ酸」もまた、カルシウムや亜鉛の吸収を妨げる強力な阻害因子です。この問題をクリアするには、ほうれん草を調理する前にたっぷりの熱湯でしっかり下茹でして冷水にさらし、シュウ酸を8割以上溶出させる下処理が欠かせません。