災害報道の現場で数々の被災地を取材してきたジャーナリストとして痛感するのは、物理的な備え以上に「人間の心理的バイアス」が致命傷になるという冷徹な事実です。
災害社会心理学では、生命の危機が迫っているにもかかわらず「自分だけは被害に遭わない」「これまでも大丈夫だった」と思い込む心理作用を「正常性バイアス」と呼びます。さらに、周囲の近隣住民が避難していない様子を見て行動を保留してしまう「多数派同調バイアス」が重なることで、避難の遅れが致命的な結果をもたらします。
テレビの中継映像やSNSの投稿を見て「外の様子を直接確認したい」という衝動に駆られる心理も、不安を解消しようとする認知行動の一環ですが、暴風雨下での屋外移動は自殺行為に等しい選択です。家族や自身の命を守るためには、客観的な条件に基づいた冷徹な判断基準を持つ必要があります。
【プロの判断基準】直ちに対策行動を起こすべき人・避難判断の条件
▼今すぐ立ち退き避難または垂直避難を完了すべき対象者:
自治体のハザードマップで「土砂災害警戒区域」「浸水想定区域(2m以上)」に指定されているエリアの居住者、木造アパートの1階や平屋に住む単身者、高齢者や乳幼児など避難に時間を要する家族がいる世帯は、風雨が強まる前の日没までに指定避難所や堅牢なホテルなどへの移動を完了させてください。移動が危険な場合は、家屋内の2階以上で崖や斜面から最も離れた部屋へ逃げ込む「垂直避難」が最低条件となります。
▼自宅待機・防護態勢の徹底に集中すべき対象者:
鉄筋コンクリート造の堅牢なマンション中層階以上に居住し、浸水リスクのない高台にいる世帯は、無理な外出を避けて自宅待機(在宅避難)を徹底してください。断水に備えた浴槽への水張り、窓ガラスへの飛散防止フィルムやカーテンの固定、ベランダに置かれた物干し竿や鉢植えの室内退避を直ちに行ってください。