パールの存在を語る上で避けて通れないのが、前記録保持犬であったチワワのミラクル・ミリー(Miracle Milly)との血縁関係です。実はパールは、ミラクル・ミリーの姉妹犬から生まれた血統(姪にあたる存在)であり、極小の遺伝的素因が色濃く受け継がれた血統的背景を持っています。
歴代の「世界一小さい犬」の変遷を振り返ると、そこには生命の神秘と同時に、人間の探求心が引き起こした特異なドラマが存在します。
- シルビア(Sylvia / ヨークシャー・テリア):1945年に亡くなったイギリスの個体。体高7.11cm、体長9.5cm、体重わずか113gという、有史以来最小の犬として語り継がれる歴史的記録。
- ブーブー(Boo Boo / ロングコート・チワワ):2000年代後半に認定。体高10.16cm、体重約675gで、一躍全米の人気者となった。
- ミラクル・ミリー(Miracle Milly / チワワ):プエルトリコで生まれ、体高9.65cm、体重約500gで認定。2020年に亡くなるまで世界的な注目を浴び続けた。
中でもミラクル・ミリーをめぐる経緯は、科学界をも巻き込む前代未聞の事態へと発展しました。ミリーの特異な小ささの遺伝的解明を狙った韓国のスアム生命工学研究所(Sooam Biotech Research Foundation)がミリーの細胞を用いたクローン作製プロジェクトを実施し、合計49頭ものクローン犬が誕生したのです。特番インタビューやドキュメンタリー映像でミリーの飼い主が「遺伝子の奇跡を証明したい」と語った一方、動物倫理学者や獣医師団体からは「生命を工学的に量産する行為」「商業主義による遺伝的搾取」との猛烈な批判が噴出しました。ミラクル・ミリーの存在は、超小型犬の愛らしさが持つ魔力と、過剰な小型化が生む倫理的ジレンマを世界に突きつける契機となったのです。