陶磁器の世界において、陶器最初の手入れとして位置づけられる「目止め」とは、器の表面にある微細な凹凸や目に見えない気孔(小さな穴)を、でんぷんの粒子で埋めて密閉する伝統的な下処理技術を指します。一見すると滑らかに見える陶器や土鍋ですが、電子顕微鏡レベルで観察すると、まるで軽石やスポンジのように無数の微小空間が網目状に広がっています。
そもそも焼き物は、ガラス質を多く含み高温で焼き締められる「磁器」と、天然の粘土を主原料として比較的低温で焼き上げられる「陶器(土もの)」に大別されます。磁器の吸水率がほぼ0%に近いのに対し、陶器の吸水率はおよそ5%〜15%にも達します。多孔質である土鍋に至ってはさらに隙間が多く、この多孔質構造が熱伝導を緩やかにし、食材の旨味を引き出す遠赤外線効果を生む一方で、「水分やにおいをスポンジのように吸い込んでしまう」という諸刃の剣を抱えているのです。
そこで、でんぷん質を溶かした液体で器を弱火で煮沸します。すると、熱によって膨潤・糊化(α化)したでんぷんの分子が毛細管現象によって深部の気孔へ入り込み、冷却とともに凝固して天然の保護膜を形成します。これこそが、古くから日本の台所で受け継がれてきた土鍋目止め理由の物理的根拠です。化学薬品によるコーティングではなく、天然の穀物成分を利用して器の内側からバリアを張る先人の知恵と言えます。