現在流通している「1円」を正しく見極めるには、販売手法の根本的なからくりを理解しなければなりません。かつて存在した「一括1円」と、現在の主流である「実質1円」の間には、所有権の所在という決定的な断絶が存在します。
「一括1円」とは、購入時点で端末代金の全額を支払いきる形態を指します。当然ながら返却不要であり、購入したスマートフォンは完全にユーザーの所有物となります。しかし2026年現在、定価が数万円から十数万円に達するエントリー〜ミドルレンジ端末を一括1円で販売することは、総務省が定める値引き上限規制に抵触するため、公式オンラインショップや正規販売店では原則として不可能です。
一方で、現在のドコモが展開しているのが「いつでもカエドキプログラム」または「いつでもカエドキプログラム+」を組み合わせた「実質負担額1円」のスキームです。この仕組みの骨子は以下の通りです。
- 端末をあらかじめ「24回分割払い」で設定し、24回目(最終回)の支払いに高額な「残価(将来の下取り想定価格)」を据え置く。
- 残りの代金(1回目〜23回目)から、他社からの乗り換えに伴う割引(5G WELCOME割など)や店舗独自の限定割引を差し引く。
- その結果、「1〜23回目までの月額支払額を1円(初回1円、以降0円など)」に抑え込む。
- ただし、23か月目までにドコモへ端末を正常な状態で返却することが絶対条件となる。
つまり、これは「購入」ではなく実質的な「2年間の長期レンタル」に他なりません。もし端末を手元に残したい、あるいは返却せずに使い続けたいと考えた瞬間、据え置かれていた残価の請求が復活します。返却不要を希望するユーザーがこのからくりを知らずに契約すると、2年後に数万円の残債支払いを突きつけられる事態に陥るわけです。