島根県立美術館のもうひとつの強力な柱が、国内外の研究者からも熱い視線を集める葛飾北斎コレクションです。このコレクションの核を成すのは、島根県出身の北斎研究者・故永田生慈(ながた・せいじ)氏から寄託・寄贈された膨大な作品群(通称:新美コレクション)です。
肉筆画、錦絵、版本など、北斎の初期から晩年に至る画業を網羅した点数は数千点規模に及び、世界で唯一とされる幻の作品群を多数含みます。館内に設置された「北斎展示室」では、緻密な保存管理のもとで定期的に展示替えが行われており、訪れるたびに新たな名品との邂逅を果たせます。名高い『冨嶽三十六景』シリーズはもちろん、北斎が弟子たちに手本として示した絵手本など、卓越した筆致を至近距離で鑑賞可能です。
さらに、同館で開催される企画展は、水や自然、山陰の風土に根ざした独自のテーマ設定で定評があります。過去の巡回展や大規模な絵画展でも、空間の余白を生かした展示演出が各メディアで高く評価されてきました。常設展(コレクション展)と企画展の巧みな連動により、地域住民から遠方の旅行者まで知的好奇心を刺激し続けるプログラムが組まれています。