曲のメッセージに共感する一方で、現実の生活において「あれもこれも」と欲望が散乱すると、強いストレスを生み出します。このやりたいことが多すぎる 心理の背景には、脳の報酬系と認知バイアスが深く関与しています。
まず挙げられるのが、心理学者バリー・シュワルツ氏が提唱した「選択のパラドックス」と「決断疲れ」のメカニズムです。人間は選択肢が増えれば増えるほど自由を感じるどころか、比較検討に脳のエネルギーを激しく浪費し、最終的な選択に対する満足度を低下させます。スマートフォンを開けば数千のオンライン講座、無数の旅行プラン、魅力的な副業の成功談が流れてくる環境は、脳にとって未曾有の過剰刺激です。
さらに、いわゆる趣味が多すぎる人の特徴として、新しい刺激に触れた瞬間に大量のドーパミンが放出される「拡散的好奇心」の強さがあります。心理学分野で「マルチ・ポテンシャライト(多面的な可能性を持つ人)」と呼ばれる気質の持ち主は、次から次へと興味の対象が移り変わる傾向があります。しかし、インプットの速度に対して人間が1日に使える時間とエネルギーは有限です。新しい対象に惹かれる高揚感と、着手しきれない焦燥感がせめぎ合い、脳内は常に不完全燃焼の煙を上げることになります。