物語の主人公である「ぼく」と、ダックスフントの愛犬「エルフィー」は、まるで兄弟のように一緒に育ちました。エルフィーはいつでも「ぼく」のそばにいて、一緒に遊んだり、いたずらをしたりして過ごします。しかし、人間よりも犬の時間の流れは遥かに早く進みます。「ぼく」がぐんぐん背を伸ばしていく一方で、エルフィーは次第に太り、年をとっていきました。
やがてエルフィーは階段を登ることすら難しくなり、寝ている時間が長くなります。獣医さんからも「もう年寄りだから、できることは何もない」と告げられます。家族みんながエルフィーを愛していましたが、エルフィーに直接「すきだよ」と言葉にして伝えることはしませんでした。「言わなくたって、わかっているはずだ」と思っていたからです。
けれども、「ぼく」だけは違いました。毎晩ベッドに入るとき、エルフィーに腕を回して、必ずこう語りかけ続けました。
「エルフィー、ずーっと、ずっと、大すきだよ」
そして、ある朝。目を覚ました家族を悲痛な現実が襲います。エルフィーが自分のベッドの中で、冷たくなって息を引き取っていたのです。家族全員がエルフィーの亡骸に取りすがって大声で泣き崩れました。みんなエルフィーを深く愛していたのに、一度もその気持ちを言葉で伝えてこなかった痛烈な後悔に苛まれていたからです。
「ぼく」ももちろん深い悲しみに包まれ、涙を流しました。しかし、家族のように自分を責め立てる後悔はありませんでした。なぜなら、「ぼく」は毎晩欠かさず、自分の溢れる愛を言葉にしてエルフィーに伝えきっていたからです。庭の木の下にエルフィーを埋め、みんなで手を合わせた後も、「ぼく」の胸の中にはエルフィーへの確かな愛と温もり、そして穏やかな慰めが残っていました。
物語の最後、近所の人から新しい子犬を譲り受ける提案をされますが、「ぼく」はまだその気になれないと断ります。そして、いつかまた別のペットを飼う日が来たとしても、必ず毎晩あの言葉を言い続けようと心に誓って物語は静かに幕を閉じます。