この時代の川崎球場といえば、爆笑のエピソードばかりではない。元プロ野球選手で解説者の金村義明氏も、当時の川崎球場の異質な雰囲気をたびたびバラエティや解説でネタにしている。ロッカールームの劣悪さや、スタンドから漂ううどんの匂い、そして観客の容赦ない野次。プレイヤーにとっても川崎球場は、一筋縄ではいかない「魔境」だったのだ。
しかし、そのガラガラの球場が突如として日本中を熱狂の渦に巻き込んだ日がある。1988年10月19日、近鉄バファローズとロッテオリオンズによる伝説のダブルヘッダー、いわゆる「10.19」だ。勝てばパ・リーグ優勝が決まる近鉄バファローズと、意地を見せるロッテ。あの日、普段は静まり返っていたライトスタンドは超満員のファンで埋め尽くされ、あふれかえった観客が球場外の網フェンスにしがみついて試合を見守った。カップルがのんびりとラーメンをすすっていた同じ客席が、日本プロ野球史に残る死闘の舞台となったのだ。