これほどまでに下半身と上半身で筋肉のボリュームに圧倒的な差が生じる理由は、人類の直立二足歩行という進化の歴史に起因します。人間の身体構造における上半身下半身筋肉比率は「およそ3対7」であり、実に筋肉量全体の約60〜70%が骨盤から下に集中しています。
下半身の筋肉は、自重の何倍もの重力負荷を受け止めながら、歩行、跳躍、走行といった推進力を生み出し続けなければなりません。骨盤と大腿骨、脛骨を連結する大腿四頭筋や大臀筋が分厚く巨大化するのは力学的に必然です。一方で大胸筋や腹直筋は、主に腕を前方へ押し出す動作や体幹の屈曲、内臓の保護を担っており、常に全体重を支える構造にはなっていません。
特筆すべきは、上半身の中で単一の筋断面積・体積として最大を誇るのが三角筋(肩の筋肉)であるという点です。腕を全方向(前・横・後)へとダイナミックに動かし、重い腕の重量をぶら下げて関節を保持する役割を持つため、実は胸板よりも肩のほうが立体的な体積を有しています。