私たちの体内では、活動時や緊張時に優位になる「交感神経」と、リラックス時や休息時に優位になる「副交感神経」が、シーソーのようにバランスを取りながら血圧や心拍数をコントロールしています。この副交感神経の主役として、脳から首、胸部、腹部へと広範囲に伸びているのが「迷走神経」です。
通常、強い痛みや恐怖などの過度なストレスに直面すると、交感神経が急激に高まって心拍数が上がり、血圧が上昇します。ところが、その極度の緊張に対して脳の防衛反応が過剰に作動し、強力なブレーキをかけるように副交感神経である迷走神経が異常な興奮を起こしてしまう現象が生じます。これが迷走神経反射の本態です。
迷走神経が反射的に暴走すると、心拍数が急激に落ちる(徐脈)と同時に、末梢血管が拡張して手足に血液がプールされます。その結果、全身の血圧が急降下し、重力に抗して頭部へ送り出されるべき血液が枯渇します。一時的な脳虚血状態に陥ることで、目の前が真っ暗になる眼前暗黒感やめまいが生じ、最終的には脳を守るために身体を水平に倒そうとする防衛反応として「失神」に至るのです。