張本卓球場を語る上で欠かせないのが、父であり名指導者として名高い張本宇(ユウ)コーチの指導哲学です。中国の元プロ選手であった父・宇コーチと母・凌(リン)さんの理論は、日本従来の根性論的な卓球指導とは一線を画す、極めて合理的かつ緻密なものでした。
メディアの特集番組や本人の過去のインタビュー、手記によれば、張本卓球場で行われていたトレーニングの最大の特徴は「打球点の早さ(前陣での超速ライジング処理)」と「幼児期における徹底した脱力フォームの定着」にあります。張本智和選手はわずか2歳でラケットを握り、台の高さに届かない頃は特製の踏み台を使ってボールを打ち返していました。大人の力任せなスイングではなく、体幹の回転とラケット角度の微細なコントロールでボールの威力を相殺・増幅させる技術が、この小さな練習場で毎日何千球と繰り返されたのです。
地元仙台の指導者仲間や、実際に子どもを通わせていた保護者コミュニティの生の声を集めると、同卓球場の指導体制について次のような評価が浮き彫りになります。
「挨拶や礼儀、用具を大切に扱う姿勢には非常に厳しいが、ボールを打っている最中の指導は驚くほどロジカル。なぜミスをしたのか、足の位置が数センチズレていたのかを的確に言語化してくれる。」
「美和選手が小学生の頃から通っていたが、練習中の集中力の密度が他クラブとは次元が違った。無駄な待ち時間が一切なく、1分1秒を惜しんで球を打ち続けるカルチャーがある。」
張本美和選手が世界舞台でみせる、男子顔負けの鋭いバックハンドドライブと変幻自在のサービスは、まさにこの仙台の練習場で培われた反復練習の結晶です。張本宇コーチが長年かけて確立した育成メソッドは、現在も現場コーチ陣を通じて所属ジュニアたちへ確実に継承されています。