文章の書き手が見落としがちな最大の盲点が、「主語を誰にするか」という視点の力学です。
「満を持して」という言葉には、「これ以上ないほど万全の仕上がりである」という強烈な自負が宿ります。そのため、自らの個人的な行動に対して「私が満を持して発言します」「満を持して資格試験を受験した」と口にすると、文脈によっては傲慢で自己顕示欲が強い印象を与えてしまいます。日本のビジネス習慣における謙譲の精神と衝突しやすいのです。
この摩擦を避けるための大原則は、「原則として第三者・プロジェクト・組織全体を主語にする」ことです。
メディアが「大谷翔平選手が満を持してマウンドに上がる」と報じたり、経営陣が「我が社の総力を結集した新ブランドを満を持して立ち上げる」とアナウンスしたりするのは極めて自然です。もし自分個人の行動について言及せざるを得ない場合は、「十分な準備期間をいただき、満を持して本日のプレゼンテーションに臨んでおります」といったように、周囲への感謝と責任感をセットで添える配慮が不可欠です。