ドのフラットはなぜ白鍵のシを弾く?黒鍵ではない理由と音楽理論の罠

ドのフラットはなぜ白鍵のシを弾く?黒鍵ではない理由と音楽理論の罠

ドのフラットはなぜ白鍵のシを弾く?黒鍵ではない理由と音楽理論の罠の真相について、最新情報を取りまとめてご紹介します。

鍵盤の位置がシと同じであるなら、なぜ作曲家はわざわざ面倒なフラットを付けて「C♭」と書くのでしょうか。「シ(B)」と表記したほうが、演奏者は迷わずに済むはずです。この疑問に答える鍵こそが、音楽理論における「異名同音(エンハーモニック)」の根本原則です。

西洋音楽の調性システムにおいて、1つの全音階(メジャースケールやマイナースケール)は、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ(C・D・E・F・G・A・B)」という7つの音名が1回ずつ重複なく使われなければならないという絶対的なルールに支配されています。もし同じ音名が1つのスケール内に2度登場したり、特定の音名が抜け落ちたりすると、五線譜の記譜体系そのものが機能不全に陥ってしまいます。

たとえば、フラットが6つ並ぶ変ト長調(G♭メジャー)の構成音を検証してみましょう。変ト長調の音階は「G♭」から始まります。長音階の基本パターンである「全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音」の音程関係を順に積み上げていくと、第4音にあたる箇所で問題が発生します。

第1音がG♭、第2音がA♭、第3音がB♭と進んだ後、第4音はB♭の半音上である「100セント上の音」を要求します。ここで演奏される音は、ピアノの打鍵位置としては白鍵の「シ」です。しかし、もしこの音を「シ(B♮)」と表記してしまうと、同じ音階の中に「B♭」と「B(♮)」という2種類の「B(シ)」が同居する事態が生じます。その結果、アルファベットの「C(ド)」が音階から完全に消滅してしまいます。

ひとつの音階の中に「シのフラット」と「シのナチュラル」が混在する楽譜は、演奏者にとって極めて読みにくく、小節内で臨時記号が乱発される悪夢の譜面を生み出します。五線譜の線上および線間隔に整然と音符を1つずつ配置するためには、「ドのフラット(C♭)」として記譜し、C・D・E・F・G・A・Bの全音名を均等に配分することが絶対に必要なのです。

小林 直樹
著者

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。