童磨の人物像を語る上で欠かせないのが、人間時代におけるあまりに異常な生い立ちです。彼は江戸時代末期、白橡(しろつるばみ)色の髪と虹色の瞳という極めて珍しい容貌を持って生まれました。その神秘的な外見から、両親は彼を「神の声が聞こえる特別な子」に仕立て上げ、新興宗教「万世極楽教」を創設。童磨は幼少期にして教祖の座に祭り上げられることになります。
しかし、本人は神の声など一切聞こえておらず、すがる大人たちの愚かさに冷めた視線を向けていました。幼少期に父親の浮気を理由に母親が父親を刺殺し、その場で服毒自殺を遂げた際も、童磨が抱いた感想は「部屋を汚して臭いから換気しなければ」という事務的な思考のみでした。彼には、恐怖や悲しみといった人間の基本的な情動が生まれつき存在しなかったのです。
20歳を迎えた頃、鬼舞辻無惨と出会った童磨は、なんの躊躇もなく鬼となる道を選びました。彼にとって鬼化は野心や怨嗟の結果ではなく、「苦しむ信者たちを自らの肉体に取り込んで極楽へ導く」という独自の歪んだ救済論を果たすための自然な移行に過ぎませんでした。