石井ふく子が手掛けた作品群は、TBSテレビの黄金時代を象徴する金字塔として輝いている。『ありがとう』第3シリーズで記録した最高視聴率56.3%という数字は、民放ドラマ史における金字塔であり、今なお破られていない怪物的な記録だ。しかし、彼女が真に誇るべきは数字そのものではなく、その数字を生み出した現場の熱量である。
当時のテレビドラマ業界は、フィルム撮影からビデオ収録への移行期にあった。石井はスタジオ収録の持つライブ感と緊張感を極限まで活かし、NGを出さずに長まわしで演じ切るスタイルを徹底させた。スタジオ全体がひとつの生き物のように脈動する現場づくりは、後進のプロデューサーや演出家たちに多大な影響を与え、日本のテレビ制作文化の基礎を築き上げた。