モンスターボックスの歴史において、ファンの脳裏に最も強烈に焼き付いているのが24段(高さ3m16cm)への挑戦です。当時の特番インタビューや自著・手記で池谷直樹自身が「ロイター板を踏み込んだ瞬間、視界が完全に壁で塞がれる」と語った通り、24段は単なる10cmの増段ではなく、人間の物理的・生体力学的限界を超える領域でした。
モンスターボックスで高さを出すためには、助走の水平方向の運動エネルギーを、ロイター板(踏切板)の反発力を用いて垂直方向のベクトルへと瞬時に変換しなければなりません。しかし、段数が23段(3m06cm)を超えると、跳び箱の上に両手を突く位置が跳躍者の身長を遥かに上回るため、手を置く角度が極めて浅くなり、上体を前上方へ押し出すテコの原理(プッシュ動作)が著しく制限されます。
池谷直樹は全盛期、何度も24段に挑戦しました。跳び箱の頂点に手をかけ、あと数センチで身体が通過するという惜しい跳躍を幾度も見せたものの、あとわずかな着衣の接触や足の引っかかりによって惜しくも落下。番組内での挑戦は実を結びませんでしたが、この限界ギリギリのドラマこそがモンスターボックスを単なるテレビ企画から「究極のアスリートドキュメンタリー」へと昇華させた決定打でした。