近年、日本のフィクション界ではインテリジェンスの世界を描いた作品が大きな話題を呼んでいる。劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』で爆発的な人気を博した降谷零の暗躍や、主演の堺雅人が圧巻の演技で見せつけた大ヒットドラマ『VIVANT』の熱狂は記憶に新しい。劇中で描かれる暗部や警察・情報機関の姿は、多くの人々に強烈なインパクトを与えた。
だが、スクリーンに映し出されるスタイリッシュなスパイ・サスペンスと、現実に繰り広げられる泥臭い情報戦との間には、決定的な溝が存在する。実際の現場では、拳銃を乱射することも派手なカーチェイスも起こらない。そこにあるのは、人間の欲望や弱み、信念を徹底的に観察し、協力者(エス)として取り込んでいく地道で緻密な心理工作なのだ。