最低賃金をめぐっては、法的な誤解が未だに数多く放置されています。第一の盲点は、「地域別最低賃金」よりも高い金額が定められている「特定最低賃金(産業別最低賃金)」の存在です。
福岡県内では、特定の基幹産業(鉄鋼業、電子部品・デバイス・電子回路製造業、自動車・同附属品製造業、各種商品小売業など)に従事する労働者に対して、地域別最低賃金より数十円から百円以上高い水準が設定されています。一般的な「福岡県の最低賃金」だけを確認して安心していると、産業別の適用を見落として賃金未払いトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
第二の誤解は、「試用期間中や高校生は最低賃金以下でも構わない」という誤った通念です。年齢や雇用形態(正社員・契約社員・派遣・パート・アルバイト)を問わず、福岡県内で働くすべての労働者に同一の最低賃金が適用されます。例外が認められるのは、都道府県労働局長の特例許可を受けた極めて限定的なケース(精神・身体の障害により著しく労働能力が低い場合など)に限られます。
最低賃金を下回る金額で労働者を雇用した場合、労働基準法および最低賃金法第40条の規定に基づき、雇用主には「50万円以下の罰金」が科される可能性があります。さらに、賃金規程に違反した差額分は過去に遡って一括請求されるため、中小企業にとっては一撃で経営危機を招く法的リスクとなります。